Italian Restaurant Baser メインイメージ

◆柏屋商店

柏屋商店 代表 上野三郎さん

上野三郎さん

「もっときれいな提灯を作りたい。その思いがなくなることはありません」

 提灯作りは私で五代目。昔の職人は「見て盗め」の気質ですから、父の仕事を見様見真似で覚えてきました。父は怒ることもなく、口を出すこともしない。ただ静かに出来を見守ってくれる職人でしたね。
 提灯とひと口に言っても作り手それぞれで技法は違います。私のこだわりは色を薄く塗って仕上げること。厚く塗ると提灯自体はきれいに見えるかもしれませんが、薄いほうが明かりがきれいに通るのです。そのぶんムラが残りやすいから難しい。歌舞伎の舞台や屋外に吊す提灯は、下から眺めたときに美しく見えるよう、文字や紋をやや下手に配します。表面に凹凸があっても滑らかに見えるように描きます。
 仕上がりに納得がいくことは滅多にありません。作ったときはよくできたと思っても、実際に舞台を眺めてみると毎回「もっとこうしたらきれいに見えるかもしれない」という思いが湧いてきます。終わりがないので一生腕を磨き続けるしかありません。生涯勉強です。

歌舞伎を楽しむアドバイス

  • 私も昔はそうでしたが、最初のうちは歌舞伎独特の言葉使いが分からないかもしれません。しかしあの独特な抑揚をつけた口上が分かるようになってくると面白みが出てきます。最初は物語の筋が分かる有名な演目を観ると、分かりやすく楽しめると思いますよ。
 
  • プロフィール

    '40年東京生まれ。小学校低学年から提灯職人である父の手伝いを始め、見様見真似で作り方を覚える。
    高校卒業後は制作に専念。
    26歳のときに五代目主人として家業を継承。
    現在は劇場・大道具用の提灯を製作する、都内で唯一の職人。
  • 上野三郎さん
 
企業紹介
  • 柏屋商店
  • 江戸三座のひとつ守田座の出入り職人として文政年間に創業。現在は劇場・大道具用提灯を製作する東京で唯一の店。主に絵付けを担当し、刷毛や筆を用いて手作業で本体を塗り、文字や紋を入れる。歌舞伎座の正面に並ぶ、鳳凰丸入りの赤い提灯も柏屋商店の仕事だ。