「もっときれいな提灯を作りたい。その思いがなくなることはありません」
提灯作りは私で五代目。昔の職人は「見て盗め」の気質ですから、父の仕事を見様見真似で覚えてきました。父は怒ることもなく、口を出すこともしない。ただ静かに出来を見守ってくれる職人でしたね。
提灯とひと口に言っても作り手それぞれで技法は違います。私のこだわりは色を薄く塗って仕上げること。厚く塗ると提灯自体はきれいに見えるかもしれませんが、薄いほうが明かりがきれいに通るのです。そのぶんムラが残りやすいから難しい。歌舞伎の舞台や屋外に吊す提灯は、下から眺めたときに美しく見えるよう、文字や紋をやや下手に配します。表面に凹凸があっても滑らかに見えるように描きます。
仕上がりに納得がいくことは滅多にありません。作ったときはよくできたと思っても、実際に舞台を眺めてみると毎回「もっとこうしたらきれいに見えるかもしれない」という思いが湧いてきます。終わりがないので一生腕を磨き続けるしかありません。生涯勉強です。