「着物を着るすべての人に喜んでいただける足袋を作りたい」
歌舞伎で使う足袋は、配役に合わせて色や柄のあるものを使うのが一般的です。たとえば歌舞伎十八番のひとつ『助六』の足袋は鮮やかな黄色。奴さんらしい力強さを見せるため履き口もくれているのも特徴です。また、旅立ちの場面では、紐足袋を結ぶ動作が出発を現す小道具になることもあります。
役者さんの足袋を誂えるときは、楽屋にお邪魔して足形をとります。靴と違って余らせて履くことはないため、足袋は足や指の長さ、甲まわりに加え、親指の長さや太さまで細かく計測。そこに正座の長い場面で履くので少々ゆとりを、など役柄に合わせた調整を加えて形を決めます。
店内の工房で行う縫製は、パーツごとに縫製担当者が決まっています。そうすれば、縫う人の違いによって履き心地が変わる、ということもありませんので。作りは昔ながらの手法ですが、底地だけ色を使った足袋など新しい品にも挑戦しています。お着物を着る全ての方に、喜んでいただける足袋をこれからも作り続けていきたいですね。