「数十年携わっても氷山の一角。衣裳屋の生涯に一人前はありません」
衣裳屋の仕事は想像しづらいかもしれませんが、着付けや手入れ、お直しまで様々な分野に精通した職人が集まる会社です。
ひと口に「歌舞伎の衣裳を用意する」と言っても、劇場による照明の違いや舞台での立ち位置、役者の年齢や役柄など、様々な要素を加味して柄や染めを施す必要が。たとえ同じ役者が同じ衣裳を着る場合でも、年齢と共に手の可動域や肩の位置が変わってくるため、そのつど縫製を変えなければいけません。
また、1枚の衣裳を長持ちさせることばかり考えていると、製作の機会が減り、腕のいい職人が減ってしまう。染め織りの伝統技術を絶やさないようにするのも、私たちの大切な仕事のひとつだと考えています。
歌舞伎の衣裳を扱うのは当社だけです。着付けは勉強すればできるかもしれませんが、作るためのノウハウは口では伝えられない経験の積み重ね。歌舞伎400年の歴史を前に、数十年携わったところで氷山の一角です。生涯一人前はない覚悟で、一生勉強だと肝に銘じています。